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『集まれ!多様なルーツを持つ上智生』参加レポート(2022年12月8日)

2022年12月8日(木)、上智学院ダイバーシティ推進室とソフィア・ダイバーシティ・ウィーク学生実行委員会の主催で、「集めれ!多様なルーツをもつ上智生」が開催されました。題名にある通り、多様なルーツをもった学生が集まり経験をシェアし、他者のルーツ、そして自分のルーツについても深く考えさせられるイベントでした。

まず社会学者の下地ローレンス吉孝さんによる講演では、社会的立場の複雑性と社会構造について学びました。例えば、日本では多様なルーツをもつ人を『ハーフ』とひとまとめにして呼ぶことが多いですが、実際は「親の国籍」や「出身と育ち」、「ルーツ」、「歴史・背景」、「ルーツの国」、「それ以外の要素(文化・宗教・経験・ジェンダー・アイデンティティ・名前等)」の組み合わせによって、1人1人が極めて多様な背景をもっています。そして彼ら/彼女らは、日本社会において「何人?」「どこから来たの?」「日本語上手ですね、日本に来て何年ですか?」といった無自覚のマイクロアグレッションを恒常的かつ継続的に経験しています。こういった個々人の日常での様々な経験(=マイクロアグレッション)は制度的・構造的な人種差別に繋がっており、多くの『外国人』が入居拒否や就職活動における不利な扱い、過度な職務質問、低賃金といった経験をしているのが日本社会の現状です。「就職活動をする」「家を借りる」「道を歩く」といった行為において障壁を感じずに済んでいることが、日本社会における特権であることに、このセッションを通じて気付かされました。

続いてのグループディスカッションでは、「人種差別(マイクロアグレッションを含む)を身近に感じた加害・被害の経験をシュア!」というトークテーマで自由に議論を行いました。ここでは「相手の発言を否定せず、尊重する。」「先入観をもって話していないか立ち止まって考えてみる。」といった注意事項があり、学生は相手を尊重することを意識しながら議論に入りました。そして、実際に学生同士で話し始めると、興味深いエピソードや考え方がたくさん出てきたことがとても印象的でした。例えば私のグループでは、多様なルーツをもつ人と出会う機会が少ないために無知や偏見が日本社会で生じていること、さらにメディアの報道方法の影響についても発展させて考えることができました。さらに上智大学ならではのことに関して、多様なルーツをもった人が多く集まっていることもあり、いきなり詮索されることが少なく安心して過ごせるという実感があることも共有されました。改めて、授業内外を問わず、多種多様な学びと出会いがある点が上智大学に在学する意義であると感じました。

続いては、ゲスト3名によるパネルディスカッションが行われました。ビヤンビラキララさんは「多様な人が生きる社会においてみんなが“生きやすい”社会を実現するのは難しい。したがって、考え続けることが一番大切になる。」と話しました。その上で「マイノリティという存在は、個人を超えた構造に抑圧されると同時に、それだけでは説明できない代替不可能でかけがえのない個人であるということを理解することが必要。マイノリティ性を含めてその人がかけがえのない個人であることを、理解したいという姿勢を見せることが重要であり、それがエンパワーに繋がる。」と語りました。国本さんは「多様なルーツをもつ人が身近にいることを知る機会を作ることが大切」と述べ、①メディア等で発信力をもった人が当事者の生活について知る機会を提供する ②学習や交流のイベントに参加する ③親になった時に子どもに対して真剣に言葉にすること、といった具体的な方法についても言及していました。最後に下地さんからは、日本社会の大きな問題として「国内人権機関がない」「包括的に差別を禁止する法律がない」との指摘をいただいた上で、今回のイベントで興味深い話が次々と出てきたこと、そしてこのような場が日常生活でも増えていけばコミュニケーションの幅も広がっていくだろうと期待をこめて当イベントは締めくくられました。

(学生職員 山本)