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キャリアデザイン企画「やりたいことを仕事にする」一番身近な社会問題を題材に考える~Day 1~

2023年5月14日、多摩Kollect法律事務所所属の永戸考氏をオーガナイザーとして迎え、【キャリアデザイン企画「やりたいことを仕事にする」一番身近な社会問題を題材に考える】のフィールドワークを行いました。JR青梅線青梅駅に集合後、現地で長年にわたって環境問題に取り組んでいる「たまあじさいの会」の方々にごみ処分場や事務所を案内していただきました。 

車で山道を15分ほど進むと、高いフェンスに囲まれた二ツ塚処分場が突如として出てきました。ただの空き地としか思えないような外観でしたが、あまりの広さに参加者も言葉を失うほどでした。この処分場を取り巻く様々な問題が現在にもわたって存在し、市民運動が繰り広げられています。 

自分たちが出したごみはどこに向かい、どのように処理されているのでしょうか。そんな当たり前のことを考える機会はあまりなかったように感じます。しかし、23市1町というあまりにも莫大な数の地区から集められたごみが東京都西多摩郡日の出町にある「最終処分場」にて埋め立てられています。ごみ現地に行き、実際に処分場を見ることで、自分の「ごみを捨てるという意識」がごみ箱に捨てるところで止まっていたことに気づかされます。ごみは焼却炉にて燃やされ、小さくなり、そこで新たに発生した灰や燃やせなかったものが、日の出町にあるような最終処分場にて埋め立てやセメント化などが行われます。 

「埋め立て」「セメント化」の実態には、環境負荷がどれほどあるのでしょうか。今回は、たまあじさいの会の方々に実際に案内していただいたおかげで、これまでの市民活動や健康被害、日本のごみ処理の異常さに気づかされました。それとともに普段からアンテナを張っていなければ、自分たちのごみがいかにほかの地域の環境問題に影響を与えているかわからない現状への危機感を覚えました。ここからは日の出町にある最終処分場の概要とたまあじさいの会の方々のお話を紹介していきたいと思います。 

まず、東京都西多摩郡日の出町にはごみ最終処分場があることをご存じでしょうか。実は谷戸沢処分場と二ツ塚処分場と呼ばれる二つの最終処分場があります。谷戸沢処分場では、多摩地域で処理された可燃ごみ及び不燃ごみの埋め立てが1994年から1998年まで行われました。広さは東京ドームの敷地の5倍ほどで、埋め立て容量は約380万㎥に及びます。同じく日の出町に位置する二ツ塚処分場は、谷戸沢処分場の埋め立て完了に伴い1998年から事業が開始されました。広さは全体で東京ドーム13個分ほどの広さがあります。埋め立て容量は約370㎥に及び、ここには最終処分場のほか、焼却灰をセメントの原料としてリサイクルするエコセメント化施設があります。 

この日の出町で長年問題となっているのが、ごみ最終処分場を取り巻く環境およびそこに住む人々への影響です。そもそも急激な人口増加、大量消費時代を経た1980年代はそれまでのごみ処理方法では追いつけないほどになっていたのです。例えば、新たな化学繊維の登場やプラスチックの登場などが挙げられるでしょう。しかし、当時財政破綻状況にあった日の出町は、財政支援を受ける代わりに処分場の開設を受け入れました。それに対して建設反対運動やトラスト運動が大規模に繰り広げられました。その市民活動とは裏腹に、1984年から谷戸沢処分場ではごみの埋め立てが開始され、そして二ツ塚処分場でも1998年から埋め立てが開始されたのです。ごみ処分場は当初から環境への影響が示唆されており、それに対してたまあじさいの会が中心となって調査結果を用いた訴訟を繰り広げたのです。

最初に案内していただいた二ツ塚処分場では、市民運動に関していくつかの課題を指摘してくださりました。また、両処分場には集音器や防犯カメラが設置され、常にどのような人が見学に訪れ、どのような話をしているのか監視しているのです。とはいえ、日の出町に住む人々は、ごみ処分場働いている方や行政の方が親戚など身近にいる人も一定数いるため、表立って反対運動をすることが難しいと語る人もいました。このように、市民運動が行われている一方ですべての住民が主体的に活動するという点においてはまだまだ課題が残っているという指摘もあり、市民運動の難しさを痛感しました。 

次に、日の出町の健康被害に関して、グラフや図を用いながら説明していただきました。日の出町は処分場と健康被害を直接的に結びつける結果を公表していないものの、実は明らかな健康被害がすでに発生しているのです。 

埋め立てに伴って焼却灰の飛散などによる周辺環境の汚染、埋め立てられている膨大な化学物質や重金属による土壌の汚染と地下水汚染、多摩川への汚染水の流入の恐れ、エコセメント工場からの排気による大気土壌の汚染が挙げられます。また、衝撃的なことにデータとして処分場が建設された年を境に、日の出町のがん死亡率は増加傾向にあるのです。さらには青梅市・日の出町にて小学生のアレルギー性鼻疾患罹患率は平均に比べて4倍以上の差があります。ごみ処理場建設時からの健康被害は明らかなものだと判断できるにもかかわらず、たまあじさいの会が起こした訴訟は、裁判にて敗訴となりました。ごみ処理は環境省が推し進める公共政策でもあることから、行政にとっては聞き入れたくない情報なのかもしれません。 

では、そもそも日本はどれだけゴミを燃やしているのでしょうか。世界の国別ゴミ焼却割合をみると日本の焼却割合は世界で第一位となっています。日本の場合、ごみの処分方法として焼却が約8割を占めているのです。また、日本は世界的に見てもごみのリサイクル率が極端に低く、その原因の一つにごみの分別区分が甘いことが挙げられていました。ごみの分別基準が緩いため、焼却の過程で自然界にはない化学物質ができてしまう危険性も指摘していました。ごみを捨てる際のちょっとしたひと手間がごみのリサイクル率にまで影響するのです。 

また、環境負荷の少ない商品を選んでいくためにも、「ライフサイクルアセスメント」が重要だと紹介していました。ライフサイクルアセスメントとは、商品の環境への負荷を商品の製造~消費~処理段階全体のプロセスで評価する取り組みです。たとえ使っている段階で環境負荷が少なく見えても、商品の製造段階で環境負荷が大きい場合もある。その見えない部分を可視化し、「消費者としての選択責任」、「企業側の環境配慮」をより広い視点から考えられる点において大変重要なお話だと感じました。 

たまあじさいの会の方々からのお話と、処理場に実際に足を運ぶフィールドワークを受けて、自分たちの出したごみについていま一度考え直すべきだと感じます。 

そして、「実際に問題となっている現場に参加できる」ことで、問題が頭の中で完結することなく、より身近に現実味を増して理解することができました。それとともに、経済活動が最優先され、安く効率的に売るという社会自体への疑問を生ませてくれたイベントとなりました。 

(Day2 に続く) 

~BBQ~ 

ごみ最終処分場、事務所見学の後はみんなでBBQを行いました!近くでとれたタケノコを食べたり、永戸先生含めたまあじさいの会の方々が焼いてくれたお肉をいただきました。学部・年代問わず様々な方々とBBQを楽しみながら、ごみ問題への知見も深めることができました。