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上智大学国連Weeks June 2023「【シンポジウム】国連専門機関の役割と日本の取組み」に参加しました(2023年6月1日)

〇冒頭挨拶・モデレーター

植木 安弘 教授(グローバル・スタディーズ研究科、国際協力人材育成センター所長)

〇特別講演

サルバトーレ・シャキターノ国際民間航空機関(ICAO)理事会議長

(Mr. Salvatore Sciacchitano, President of the Council, ICAO)

〇講演者・パネリスト

松居 眞司 氏(在オークランド日本国総領事(前外務省国際協力局専門機関室室長))

猪原  透 氏(同室 担当:国際民間航空機関・国際海事機関等)

岡崎 優理 氏(同室 担当:国際労働機関)

中村 公洋 氏(同室 担当:国際電気通信連合・万国郵便連合等)

伊藤 あかり氏(同室 担当:世界観光機関等)


2023年6月1日、「上智大学国連Weeks June 2023」初日、シンポジウム「国連専門機関の役割と日本の取組み」が開催されました。

植木教授により挨拶がなされたあと、国際民間航空機関(ICAO)のシャキターノ理事会議長 による特別講演が行われました。

国連には、WHO(世界保健機関)や IMO(国際海事機関)など、世界のさまざまな状況に対応するための専門機関があります。ICAOは、カナダ・モントリオールに本部を置く専門機関の一つです。航空によって人びとの友好関係や協力関係を促進させる目的で、「国際民間航空条約」、通称「シカゴ条約」の制定によって1944年に設立されました。当時、シカゴ条約に署名した国の中に、日本やドイツ、イタリア派は含まれていませんでしたが、日本が加盟したのは1953年で、今年で70周年を迎えます。

ICAOの任務は、加盟国が安心・安全な民間航空秩序を確立し、持続可能な国際航空を提供することにあります。ICAOは安全性に関する標準設定を行うだけの機関ではなく、監督監査機能についても説明されました。加盟国すべてが人的、財的資源、スキルなどが同程度ではない中で、安全・安心を確保するための監査も行なっています。

シャキターノ理事会議長は、国連Weeksの開催に祝辞を述べた後、国際航空輸送が世界経済にもたらす意義について説明されました。

2040年には乗客数が現在の世界人口80億人に昇ると見込まれる一方で、経済発展が著しく遅れている国や地域もあり、航空機を利用することができない人もまだ多く存在します。「ICAOでは、そうした地域格差を是正し、すべての地域で民間航空システムの発展を促進していきたい」と述べました。

次に、経済発展と国際航空の状況に関する統計データを紹介されました。GDPに対する航空の貢献度合いについては、ドイツやフランス1カ国のGDPに匹敵し、航空サービスに関わる人は8800万人と言われていることからも、国際航空は世界的な経済発展に大きく貢献していることが分かります。

ICAOで設定している5つの戦略目標、①安全、②航空能力と効率化、③保安の促進、④航空輸送の開発、⑤環境保全についても説明なさいました。

特に⑤環境保全への取り組みを詳細に述べられました。航空のCO2排出量による気候変動への寄与度は3%未満と言われていますが、さらなる脱炭素化を目指すために、技術革新と航空路の効率化が挙げられています。

技術革新については、CO2を20%削減できる航空機の導入が期待されています。航空路は、地上の状況に応じていますが、紛争地域がなくなることで飛行距離を抑えることが可能になります。持続可能な航空燃料(SAF)を導入することで、CO2の排出量をさらに抑えることができると言われています。日本でもSAFへの投資拡大が発表されており、2025年には10%程度切り替えていくと発表していますが、SAFの価格は高いのが現状です。水素燃料を使用することでも、CO2排出は抑えられるとされていますが、安全面での課題点は残っており、ICAOはこれを見守っていきたいと、さらなる技術革新に期待されています。

時折ジョークやクイズを混ぜながらICAOの取り組みについて真剣に熱く語り、「各国と各国民の協力を促進することが、平和をもたらし、平和維持に繋がる」とお話され、質疑応答をもって特別講演を締めくくりました。

続いて、外務省国際協力局専門機関室による講演です。松居総領事(ニュージーランドのオークランドに着任予定)は、「国連専門機関の今について知ってほしい、地球課題について一緒に考えていきたい」という想いで、今回のシンポジウムに登壇されました。対面の国連Weeks開催を評価し感謝しながら、15の国連専門機関についてご説明されました。

4名のパネリストがそれぞれ担当する専門機関の説明と、日本との関係性についてプレゼンテーションが行われました。

猪原氏は、国際海事機関(IMO)と国際民間航空機関(ICAO)についてご説明されました。特に北朝鮮によるミサイル発射においては、海上安全と航空安全の観点から、両機関で慎重に取り組まれています。

岡崎氏からは、日本とは100年以上の歴史があり、創設から深く関わっている国際労働機関(ILO)についてお話をいただきました。ILOにより、国際的に一日8時間労働制が導入されました。

中村氏からは国際電気通信連合(ITU)と万国郵便連合(UPU)についてご紹介いただきました。両機関とも10名以上日本人職員を派遣しており、UPUについては事務局長が日本人の目時政彦氏となっています。

最後に、伊藤氏からは奈良県にアジア太平洋地域事務所が置かれている世界観光機関(UNWTO)についてお話いただきました。アジア太平洋地域の調査事業や観光事業の支援を行なっています。

上智生に限らず、他大学の大学生や高校生などからの質疑とその応答をもって、今回のシンポジウムは締めくくられました。

(学生職員 アンジェラ)